BEANSBOOK 7

『 片 思 い の ラ ン ナ ー  ・  2  』       永 田  早 紀

 

下足室を出ると真希子センパイの姿が見えた。

真希子センパイは俺に気付くと読んでいた本を閉じた。

 

「あら!牧くん!

どう?200メートルの記録は伸びてる?」

俺は「ほどほどに」と答える。

真希子センパイは目を細くして笑った。

「いつも遅くまで練習、頑張ってるものね」

この笑顔が、俺はとても好きだ。

だけど、この笑顔は俺のものじゃない。

真希子センパイは、陸上部の部長だった木村さんと付き合っている。

悔しいけど、お似合いの2人だ。

俺は色んな気持ちを隠したくて、真希子センパイに尋ねる。

「何の本を読んでたんですか?」

「これよ」

本のカバーを外し、表紙を俺の方に向ける。

手をつなぐ男子と女子のシルエットが描かれていた。

何とも言えない気持ちになった。

真希子センパイの手を取って走りたくなった。

でもそれは出来ない。

だから俺は1人で走る。

伝えられない想いを抱えながら。

 

俺は作り笑いをして「その本、読んでみます」と言った。

真希子センパイは「感想聞かせてね」と笑った。

軽くお辞儀をして、俺は歩き出した。

行き場のない思いが俺の背中を押す。

 

今は走っちゃいけない。

と心でつぶやく。

 

俺はそのまま駅前の本屋に向かい、真希子センパイの読んでいたのと同じ本を買った。

 

 

【  E N D  】